〜鬼塚俊秀のなんとなく書いてることば〜
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小説・雑文「3月24日」
ブログもだいぶ長く続けてきましたので、
ここらで初心に戻って、文章でも書いてみようかなと。
昔はたまにこういうのも書いていた気がします。
恥ずかしながら短編小説というか、雑文というか…(笑)
と、いうわけで、今回は久しぶりのフィクションです。
誤字脱字あっても、おもしろくなくても、そこはお許しください(笑)



3月24日。
煙草を吸っている。
少し離れた地面には西日が射して、きっとそこは暖かいんだろうなと思いながら。
地下の楽屋入口に続く階段で。
4本目。4という数字は嫌いだから、もう一本吸おうと決めている。
寒い。
階段に腰掛けると地面が少し湿っていた。
今日も風は冷たい。


真っ赤なドアから、音の振動が外に漏れている。
受付をやっているバイトの子が最近塗ったらしい。
前は何色で、どんな柄だったっけ。
ペンキが安物だったせいか、それとも塗り方が悪かったのか、ドアの赤色はもうひび割れていて、音がドアに伝わるたびに細かい粉が落ちていく。
その粉の向こう、仲間の音が不愉快で仕方ない。


今日のライブは2か月前から決まっていた。
無名のバンドが最初に目指すライブハウス。
とりあえずここで成功すれば、「無名」から「若手」になれるライブハウス。
声がかかった1月、借りていたスタジオをキャンセルして、朝まで飲んだ。
3時過ぎの居酒屋でけんかをして、始発を待つ立ち食い蕎麦屋で、みんなで泣いた。
中野。


5本目。風が強くて火を点けるのに少し手間取った。
だんだん体が冷えてきた。


「こんな時だから、エンタメが必要なんだよ!」
「こんな時こそ、音楽だ!」
「自粛なんかしねえよ!みんなを楽しませるために、俺たちはやらなきゃいけねえんだよ!」
ここ最近、知り合い全員にそんな声をかけていた。
自分以外。
なんだか萎えた。


チラシをコンビニで白黒コピーして、近所の店にチラシを貼っている仲間を、ただ見てた。
ノルマは120人。集まるかどうかは微妙。
仕方がない。運が悪かったんだ。


もちろん、ライブは成功させたい。
でも、こんな誘い方じゃない。
ノルマを超えるために「あんなことがあった今こそ」を使いたくない。
それをうまく伝えられなくて、何が正しいのかもよくわからなくなって。
ただ、集まりに顔を出して、居心地が悪くて一人で煙草を吸った。


「聴きたい奴がさ、ただ聴きに来てくれればさ、人数は関係なしに、おれらはただやればいいじゃん。」
絞りだした言葉。
「はあ?人数いねえとチャンス逃すんだよ。」
「むしろ人少なければやらなくてよくね。」
チャンスに負けた。あっさりと。
自粛するつもりなんか無いし、それを強要する空気も嫌いだ。
引っかかってるものを、うまく伝えられない。
なんでこんな奴が歌詞なんて書いてんだろ。
自分には才能ねえんだなって思い知らされた。


6本目。風は落ち着いた。日が落ちた。
ドアの上の電球が点いて中の音が止まった。


誰かが呼びに来るんだろうな。
ドアが開いて隙間から見慣れた顔が出てきた。
赤い粉がふわっと舞って光った。
「やるよな。今日。」
「お、あ、おう。」
「そろそろじゃね。」
「あと一本だけ。」
「寒くね。」
「3月。」
「入るかな。今日。」
「あと一本吸ったら行く。」
ドアが閉まる。開いた時よりも多く粉が舞う。
光はさっきよりもきれいだ。


煙草を捨てて、立ち上がる。
呼吸が上手くできない。息苦しい。


7本目。で合ってるっけ。
うっすら星が見える。田舎とは全然違う。


7って数字は嫌いだから、もう一本吸って、行こう。



〜おわり〜



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